ナマスカーラム! みなさん、こんにちは。もうすぐこちらに来て1カ月になります。インターネットにほとんどアクセスできなかったり、一度もテレビを見ていなかったりするせいか、本当にどこか別世界に来ているようです。10日ほど前、こちらに来て初めて雨が降り、それからかなり蒸し暑い日が続いています。街に出ると、アスファルトの照り返しのせいで、余計に暑さが感じられますが、キャンパスの中と周りには湖や椰子の木がどっさりあるので、暑くてもげっそりするほどではありません。建物が泥とレンガで出来ているので、熱を効果的にコントロールできます。
勉強のほうは、ずっと別世界で楽しく、というわけにもいかず、だんだん本格的になってきています。異文化の多様性やコミュニケーションのノウハウをカバーした後は、参加者全員で「ドリーム・ファクトリー」を行いました。簡単に書くと、各自10分間で、できるだけ鮮やかに自分の夢を表現したスピーチを行い、参加者や講師全員で意見交換を行う、というものです。実はまだ全員終わったわけではなくて、明日最後の4人がスピーチをする予定になっています。たった10分間なのですが、本当にさまざまな夢を目の当たりにできて、毎日刺激を受けています。もう1カ月近くも同じ屋根の下で暮らし、毎食一緒にテーブルを囲んでいるはずなのに、ステージの上で将来のビジョンを語るみんなは、全く違う個人に出会うほど新鮮です。1日のセッションで4人がスピーチをするのですが、セッションが終わるたびに、スピーカーの周りに数人ずつ集まり、それぞれの意見をぶつけ合ったり、経験を分かち合ったりしてティータイムを過ごします。知り合いの関連団体を紹介したり、似通った興味を持つ人同士で新たなつながりが生まれることもしばしばです。
今回のドリーム・ファクトリーで生まれた夢を、いくつかかいつまんでご紹介します。
マイクロ・クレディット銀行:内戦で荒廃した西アフリカ・シエラレオネから来たモハメッドは、特に女性のためのマイクロ・クレディット銀行を始めたいと考えています。ちなみに彼は、今回2人だけの、いわゆる正眼者の1人です。内戦の影響を直接受けた彼は、すでに自国で活動を始めています。
みんなのための学校:これはインド東北部、メガラヤ州出身のピンホイの夢です。自身、基督教団体が運営する、さまざまな障害を持つ子供たちのための学校で学び、働いた経験のある彼女は、障害を持つ子、障害を持たない経済的に困難な子等、みんながともに学べる学校設立を目指しています。学校の庭では野菜を作り、子供たちの食卓に乗せるほか、余った分は村で売って経営資金にするそうです。実体験に裏打ちされた彼女の言葉には、他にはない説得力があり、みんな魅了されました。
環境にやさしい子供の健康センター:環境問題の第一線を行くドイツから来たジェシカは、IISEの創設者と同様、環境問題に大変高い意識を持っています。途上国において子供たちの健康を保つためには、正しい予防と早期治療が何よりも効果的だと考えた彼女は、乳幼児のための健康相談・学習センターを、環境にやさしい形で設立したいと考えています。
ちなみに、私の夢は、「みんなのための図書館」を設立し、アジアの農村地域にそのコンセプトを広めることです。私は、幼い頃から本の虫でした。飽きっぽい私ですが、読書だけは20年間欠かしたことがありません。障害の有無、裕福に関わらず、本をはじめとする活字媒体、広くは知識一般にアクセスすることで、人間の可能性は数倍に高められると思います。視覚や運動機能に障害を持つ人、高齢者、外国人、寝たきりの重病患者、乳児をかかえた母親など、すべての人に活字へのアクセスを可能にするために活動する図書館を作るのが私の夢です。また、農村にそのような図書館を作ることで、ともすれば周縁化されがちな人たちが、常に社会に参加するきっかけになるというのも主なゴールの1つです。今の段階では、タイの農村部に図書館を始めることを考えていますが、もし成功したら、その他さまざまな国にもこのようなコンセプトを広めていけたらと考えています。
これから10カ月間、私たち参加者は、それぞれが持つ夢を現実に変えるため、あらゆる知識と技術を身につける予定です。来週からは、本格的にプロジェクト作成や予算の立て方、PR等の研修が始まります。夏には、2カ月間のインターンシップも予定されていますし、その直前には、身に着けた技術を用いて、実際にIISEとして3つのプロジェクトを立ち上げることになっています。
■ ケララ便り ■ (1)初めの2週間
みなさん、こんにちわ! 今、インドの最南端、ケララにある社会起業家の研修所IISEに来てもう2週間、23人の参加者と、9人のキャタリスト(影響を与えてきっかけを作る人という意味で、IISEでは互いに刺激し合う関係を尊重するために、講師の代わりにこの言葉を使います)、多くの現地スタッフという大家族の生活にもだいぶ慣れてきました。
すでに講義は始まっていますが、まだイントロというところです。パソコンや英語のレベルごとにグループ分けしたり、他文化コミュニケーションのノウハウを学ぶためにロールプレイをしたり、現地の言葉であるマラヤラム語をかじったり、そんな毎日です。
IISEのスケジュールはお寺の修行のように健康的で、朝は6時に起きて朝食、7時には授業が始まります。途中コーヒーブレイクなどははさみますが、90分のコマが3つあって昼ご飯、その後は3時間ぐらい自由で、目の前の湖で水泳を楽しむ人も、キャンパスがあるヴィラヤニ村のバス停近くのお店に、日用品やお菓子の買い出しに行く人もいます。
お茶を飲んで5時から最後の授業で、7時に夕食。当たり前ですが、メニューは圧倒的にカレーが多いです。夕食の後は、グループワークをする人、ソーシャルルームでメールチェックをする人、湖で泳ぐ人、その辺で歌ったり踊ったりする人、早々とベッドに向かう人、とバラバラです。まだコースが始まってから日が浅いので、なんだかキャンプにでも来ているようで、そこら辺でいきなりスワヒリ語の歌やスペイン語クラスが始まったり、とてもにぎやかです。みんな個性豊かで、ものすごくエネルギーに溢れていて、気付かないうちに笑い出さずにいられないような空気に満ちています。どれだけおもしろいメンバーが集まっているか、ちょっと書いてみたいと思います。
まず我らがアジアチームは、インドの北東部の山間部から来た女の子、ピンホイ(すごく面倒見がいいけれどすっ飛んでいるおもしろい子)、チベットから男女1人ずつ(ゲンゼンとキーラ。キーラは私のルームメイトです)、ネパールの若きお父さん、コム、そして私です。もちろん、キャタリストの中には何人かインドの人がいますし、ステージの演技指導を担当するのはネパール出身の役者さんです。
中東のサウジアラビアからは、今季の参加者の中で最年長(51歳)の、みんなのお父さんのようなフスニが来ています。普段はすごくフレンドリーで、よく笑うおもしろい人なんですが、ひとたびアラビアダンス(?)を始めるとすごーくアラビアっぽくなってビックリします(当たり前か)。言葉にしにくいんですが、「おおお、ラクダに乗って月の砂漠を進んできそう!」という感じになります。
ヨーロッパからは、ちょっとセンシティブでまじめだけれどとてもオープンなノルウェーの女性、カリン、それにドイツからはちょっと皮肉屋でビールがよく似合いそうな男性、ロビー、水泳が大好きな女の子、ジェシカの2人が来ています。キャタリストの中にもヨーロッパ出身者が5、6人いて、特にドイツ語話者が多いです。
アメリカ大陸はあんなに広いのに、コロンビアからの参加者、マルコだけです。彼は、おしゃべりでもなく、ダンスも得意じゃないので、コロンビア人としてはマイノリティーだと言ってました。それから、我らが英語のキャタリストは、アメリカのボストン出身の作家さんです。でも、しばらく中国に住んでいたことがあって、信じられないぐらい情熱的中国人歌手の真似が上手いです。
そして、アフリカ。まず、ケニアからは元気なお兄さん、ロバートと、ダンスが大好きな女の子、ジェインとルーシーが来ています。ガーナから来たエリックとジュリアスは、巨大な箱にいっぱい、魚や肉で作った「ガーナ版ご飯のお供」のような物を持ってきたそうです。早々、初日には、エリックが、みんなに本場のガーナチョコレートをくれました! 南アフリカの女性、ザビエルは、すごく礼儀正しい貴婦人のような人です。自然豊かなマダガスカルからの男女、マーティンとホーリーは、フランス語なまりのようなマラガシー・イングリッシュがとても魅力的です。リベリアからの参加者4人(ヴィクター、ジェームズ、ジョンソン、サー)のうち3人は、とても年格好や雰囲気が似ているので、しょっちゅうみんなに間違えられています。シエラレオネから参加しているモハメッドは、弱冠二十歳とは思えないほど堂々としていてたくましいです。
23名、私の文章力では、とてもみんなのおもしろさを表現しきれませんし、それぞれが歩いてきた道は、一人ひとり本が書けるほど全く違う物です。それに、なんと言ってもみんな夢があって、そのためにIISEに集まっているので、近い将来ゆっくり夢の交換をするのがとても楽しみです。