皆様

こんにちは! お元気ですか?アークどこでも本読み隊の堀内佳美です。

2月4日の午後11時頃、無事タイの首都バンコクに到着しました。今タイ人の
友人と二人暮らしをしているアパートでこれを書いています。タイは連日30度
を軽く越える相変わらずの暑さですが、冷蔵庫からサウナに飛び込んだ割には、
幸い体調を崩すこともまったくなく、元気にしております。

皆さんには、「何をいまさら」とお叱りを受けるかもしれないのですが、私にと
って2009年という1年は、充実という言葉では書き表せないほど、発見や出
会い、落胆や喜びではちきれんばかりでした。そのためか、帰国してしばらくは、
ぼーっとしてしまいました。特に高知の実家に帰ってから、お正月を挟んだ十日
間ほどは、完全にスイッチオフ状態で、読書三昧をしたり、地元の友達に会った
りしているうちにどんどん日が経っていきました。人には静のときとと動のとき
があると思うのですが、どうやら私のそれはかなり極端なようです。その「静」
が突然「動」に取って代わったのは、まだお正月気分の抜けきらない1月6日、
地元の新聞にアークの活動紹介を掲載していただいた直後でした。

記事の載った朝刊が配られた日から、文中に書いた連絡先メールアドレスに、次
々と応援メッセージをいただくようになったのです。ご子息がタイに留学されて
いることから親近感を覚えてくださった方や、「ハチドリの涙ほどだけれども寄
付金を役立ててほしい」と申し出てくださった方など、それぞれにまだお会いし
たこともない方から、暖かい言葉をいただきました。出身校である高知県立盲学
校の大先輩方や、山猿のようだった私の幼少期をご存知の先生方からもメッセー
ジをいただきました。そのうえ、数名の地元の方からは、具体的な活動への協力
のお申し出までいただいて、私は圧倒されてしまいました。ですから、当然のん
びり読書三昧などと言っていられなくなったわけです。

私は、進学のため、15歳の春に地元を離れました。上京してからの11年間は、
2度の海外留学も含めて、多くの出会いや経験に満ちた、本当に恵まれたもので
した。でも、その一方で、私にとって高知という場所が少しずつ遠い存在になっ
てきたことも否定できません。それは、外の世界を知りたいと思った自分の責任
であり、成長するということと引き換えに払わなければいけない対価なのかもし
れないとは思いつつ、でもやっぱり寂しいと感じることも間々ありました。そん
な中で、たまたま読んだ新聞記事を通して、こんなにも多くの地元の皆さんから
励ましていただけたことで、分厚く暖かい手のひらを背に当てられたような気持
ちになりました。遠ざかっていた高知が、又少し戻ってきてくれたように感じた
のです。

そんな思いと大量の荷物をかかえて、1月14日、私は夜行バスで東京へ戻りま
した。以前ルームシェアをしていた友人は、朝早く転がり込んできた私を、おに
ぎりと暖かいお味噌汁で向かえてくれました。お世話になっている私の母世代の
ご姉妹は、お漬物フルコースと手作りのおかずでほっとさせてくださいました。
プロの音楽活動をしている、学生時代の友人は、自分のラジオ番組でアークを紹
介し、応援したいと言ってくれています。そのほかにも、私は東京にいる約3週
間、ほとんど毎日誰かにお会いし、タイで移動図書館を立ち上げるということに
ついて聞いていただきました。都内の公立図書館で、長年にわたって「みんなの
ための図書館」を目指して地道に活動してこられた図書館司書さん、ビルマ難民
キャンプの図書館に立ち上げから関わられたいわば大先輩、豊かな発想で次々と
新しい形のCSRを考え出されている基職場の上司など、全く違う立場と目線でご
意見をくださったり、ご自分の体験をお話してくださったり。非営利活動を始め
ようとしている私にとって、自分のメッセージを発信するのは不可欠な仕事です
ので、この短い東京滞在は、タイへ行く前の絶好の準備期間となりました。

そして、今私はタイのバンコクにいます。3年前、タマサート大学の留学生だっ
た頃に一緒に住んでいた友人と、去年やっと延長工事の終わったBTSという電車
の駅の近くで暮らしています。新しい駅はできても、うれしいことにご近所さん
はほとんど同じ顔ぶれです。アパートの管理人さんは、3年間のブランクがなか
ったかのように普通に「おかえりー」と迎えてくれましたし、角の屋台のおじさ
んは、トムヤムラーメンを袋に詰めながら、「あれ?5年ぶりぐらいだっけ?日
本でうちのラーメンの宣伝してくれた?」。

アークは、やっとスタートラインに立てたかな、という感じですし、お話キャラ
バンも出発していません。でも、私は、高知、東京、そしてタイの人たちに支え
られてここにいることに、とても安心感を持っています。アークのカタツムリの
歩みを、皆さんがそれぞれの場所で見守っていてくだされば大変うれしいです。

最近日本は寒暖の差が激しいとききました。どうぞお体を大切になさってくださ
い。